この技術ブログはGRL独占のウェビナー【New Qi2 Technical Features and Compliance Considerations for the 2024 Landscape】の要約です。ニュースレターの登録やLinkedInのフォローで次回の無料ウェビナーの情報をお送りします。
ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)の Qi ワイヤレス充電規格は2022 年以降、急速な発展を見せています。Qiバージョン2.0は2023年に正式にリリースされ、改良されたレガシーのベースライン・パワー・プロファイル(BPP)、拡張パワー・プロファイル(EPP)、そしてデバイスの最適な位置合わせによる15Wの充電速度を可能にする新しいマグネティック・パワー・プロファイル(MPP)に重点を置いています。WPCはワイヤレス充電技術をスマートキッチン家電(Kiワイヤレス電力規格を使用)、電気自動車(EV)、製造ロボットなどの産業にも拡大しています。
今回はMPPパワーロス・アカウンティング(MPLA)、LQK測定、異物検出やその他の重要なQi2コンプライアンスのプロセスを紹介して行きます。
Qi2 vs Qiパワープロファイル
製造者は Qi 規格とQi2規格が対応可能とする電源プロファイルを理解することが重要です。Qi2 ロゴの付いたトランスミッター(Tx)とレシーバー(Rx)の設計はすべて後方互換性のために MPP と BPP の両電力プロファイルに対応する必要があります。Rx 認証対応はオプションですが、Tx 認証対応は必須です。
BPP や EPP などのレガシー電源プロファイルは、Qi 規格でのみサポートされています。Qi規格のデバイスは、Qiバージョン1.3.3と2.0のBPPとEPPの両方の電源プロファイルをサポートすることができます。
MPP | EPP | BPP | |
Qi2 MPP Tx | 15W | n/a | 5W |
Qi2 MPP Rx | 15Wまで | n/a | 5W |
Qi EPP Tx | n/a | 15Wまで | 5W |
Qi EPP Rx | n/a | 15Wまで | 5W |
QiとQi2パワープロファイル対応の違い
MPPパワーロス・アカウンティング(MPLA)
アクティブ・パワー・トランスミッター(PTx)とアクティブ・パワー・レシーバー(PRx)の間にコイン、クレジットカード、キーなどの一般的な物体が落下すると過熱を引き起こし、ユーザーに危険のリスクをもたらす可能性があります。MPPパワーロス・アカウンティング(MPLA)機能は異物検出でこのリスクを軽減します。トランスミッター(PTx)とレシーバー(PRx)の間で異物が検出されるたびにトランスミッターはより低い電力量に調節し、干渉物体の熱蓄積を最小限に抑えます「ベスト・エフォート・チャージング」として知られるこのプロセスは継続的なバッテリー充電を可能にしながら、過熱に伴うリスクを防ぎます。
MPLA Formula
MPLAは送信機が電流伝送路内の異物の存在によって生じる電力損失を推定します。電力損失は以下の式を用いて考慮することができます:
トランスミッターは送信している電力量(Pin)を測定し、伝送路内の既知の損失をすべて差し引いた後、最終的に受信機が受信した電力を差し引きます。既知の電力損失と実際の損失との差は電力伝送経路内の異物の存在に起因する可能性があります。
トランスミッター(PRX_FM)とレシーバー(PRX_FM)内の金属部品からの電力損失もフレンドリーメタルロスを使い、PFM_LOSSとして計算されます。
PFM_LOSS = PTX_FM + PRX_FM
Friendly metal loss formula
このフレンドリーメタルロスはコイル間の電力伝達を維持するために必要な直流電流を使ったシステムモデルで計算されます。現実の環境におけるトランスミッターとレシーバー間のばらつきを考慮するため、フレンドリー・メタル・ロスを計算する際にはスケーリング係数も大事です。
Ecosystem scaling & correction factors
これに比べ、PTx_circuit_loss と PRx_circuit loss は製造設計によって大きく変わります。パラメーターはそれぞれの製造業者の電力損失の予想によって決定されます。コイル損失の計算はコイルパラメーターと嵌合相互インダクタンス特性によるため、他のパラメータに比べて複雑です。
さらに、これらのパラメーターはPTxコイルとPRxコイルがシステムモデルにそっていることを保証する仕様によって厳密に制御されています。嵌合パラメーターはコンプライアンステストでTxコイルとRxコイルをそれぞれGolden Tx (GTPT)コイルとGolden Rx (GTPR)コイルを参照して、嵌合LQK測定されます。PTx と PRx は MPLA プロトコルを使用して、大事な MPLA パラメータ情報を交換します。
MPLAプロトコル
PTxとPRxの間で構成フェーズと交渉フェーズで交換されたMPLAプロトコルデータはPTxが電力転送フェーズで異物の影響を推定するために使用されます。
構成フェーズ
- PRx は PTx に電力測定ウィンドウとオフセットを送信します。
交渉フェーズ
PRx と PTx はMPLAパラメーターを交渉フェーズで送信しあいます。
- PRx は PTx に gCoil Rx の要求を送ります。
- PTx は PRx に gCoil Rx を送信します。
- PRx は Alpha_FM_DC、Alpha_FMと gCoilTx を送信します。
電力転送フェーズ
異物がない場合、PRxはPTxから受け取ったパラメーターを使い、インターフェースで受信した電力を計算します。MPLAから得られた計算電力は電力転送フェーズでPTxに送られます。
トランスミッターの入力電力(PIN)からの損失がすべてMPLA方程式に従って差し引かれた後、推定電力と実際の電力の間に残る差は電力伝送経路内のフレンドリー・メタルに分けれられます。これは電力内異物検出(FOD)にも使用できます。
これをわかりやすくするためにGRLのワイヤレスパワーTxテストソリューションは以下のように興味のあるプロトコルパケットをフィルタリングし、[Power Loss Accounting]と[ACK packet]だけを選択することができます:
- RxはPLAパケットをPTxに送信します。推定受信電力は整流器の電力と同様に基準となる嵌合コイルに基づきます。
- TxがACKパケットを送信しない場合、Rxは負荷電力を増加させません。
- TxがACKパケットを送信した場合、Rxは1W以下の電力を増加します。
異物検出(FOD)の方法と対策
異物の検出には主に2つのアプローチがあります: プリパワーFODとインパワーFODです。
プリパワーフェーズではトランスミッターは外気品質係数(Q)を計算します。トランスミッターは外気 Q の小さな変化を異物に分けられますが、PRx が PTx の上に置かれると誤検出を引き起こす可能性があります。これを避けるため、PTx は ASK 応答を受信しない場合にのみ、Q の偏りを異物と見なします。確認が終わると、PTx は安全な動作電力を通知し、先手を打ってリスクを軽減します。
インパワー FOD はTx が Rx から推定受信電力(Pest_rx)と整流電力を受信したときに発生します。そこから、Tx は可能性のある異物電力(Pfo).を推定します。Pfo値が Pfoしきい値を超えた場合、送信機は電力伝送をスロットルし、より安全な動作電力に設定します。
LQKパラメータとコイル磁気の境界
コイルとフレンドリー・メタル・ロスは嵌合結合特性(LQK)によって大きく左右されます。それは以下のように説明されます:
- L = 嵌合誘導コイルLlTXとLlRXの誘導パラメーター
- Q = 品質係数のQlTXとQlRX
- R = 反応パラメーターのKiとKr
それに加えて、MPP磁気境界(MPPMB)は認証された機器間の相互運用性を保証します。
LQKとMPPの磁気境界の関係を示すグラフ
Qi2ワイヤレス充電だとMPP磁気境界(MPPMB)は機器の相互運用性には必須です。この境界は複数の範囲によって分けられます:コンプライアンステストで使用され、GRLのように承認されたツールベンダーによって提供されるGTPTとGTPRのペアのための小さな範囲とTxコイル対GTPRとRxコイル対GTPTのペアのためのより広い境界(デバイス対デン・ペア・バウンダリー)。この境界線内のデバイスは規格を満たすだけでなく、優れたFO予測や高い相互運用性を可能にします。準拠により、多様な Qi2 機器での問題ないの操作と信頼性の高いユーザーエクスペリエンスを期待できます。
GTPT と GTPR のペア間の誤差は少なく、WPC 認定テストラボでのコンプライアンステスト中に LQK 測定にも使用されます。次の境界はTx コイル対 GTPR および Rx コイル対 GTPT ペアにあります(デバイス対ゴールデンペア境界)。デバイスとゴールデン・ペアがこれらの制限を満たす場合、それらの Tx と Rx のペアリングもこれらの境界内に収まることが期待されます。境界内に収まるデバイスのマットパラメータは、より良いFO予測と良好な相互運用性も期待できます。
LQLQK測定試験手順
WPC認定テストラボでのLQK測定用コイルの準備についての注意点
LQK測定のためにLCRテスト機器との接続を確立するために追加ケーブルとSMAコネクターで少なくとも2つのコイルがついていることを確認してください。寄生測定用に追加のケーブルと SMA コネクタを 1 つ用意してください。LQK バウンダリを計算する際には、ケーブルの寄生値を削除する必要があることに注意してください。最後に、TxコイルまたはRxコイルが試験治具に固定できるようにしっかりと梱包されていることを確認してください。
GRLのポジショニング機器
手順
- 360KHzでのLCRキャリブレーション(オープン&ショート)の実行
- 360KHzで試験治具の特性評価(インダクタンスと抵抗)を行う:LTX, LRX, RTX, RRX, LM, RM
- コイルのリード線の特性評価
- 電気的中心を使って(0,0)位置を求めます
- TxコイルとGRxコイルを嵌合位置に配置します。
- コイルの位置(x方向とy方向)を調整し、相互インダクタンスが最も低い電気中心を特定します。
注意:この位置はマグネットアタッチメントによる嵌合とは異なります。磁着位置は「マグネットセンター」とも呼ばれます。
- L'TX, L'RX, R'TX, R'RX, LM, RM を測定します。
- Txコイルを(電気的中心から)XまたはY方向に2mm移動させ、TxコイルとRxコイルの間に2mmのスペーサーを置きます。この位置を(2,2)と呼びます。
- L'TX, L'RX, R'TX, R'RX, LM, RM を測定します。
- 同じ作業を128KHzのために繰り返します
- 出た計算を限界値と比較します
注意:コイルの設計は試験結果を大きく影響する可能性があるため、最適な状態であることを確認してください。
測定器のリストについてはウェビナーをご覧になるか、プレゼンテーションスライドをダウンロードしてください。
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筆者について
ラジャラマン・ヴェンカタチャラム
プロトコルとパワー・ソリューションズ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント
ラジャラマンはGRL、Tektronix、Intel、Prodigy Technovationsで23年以上もの間技術開発に携わってきました。ラジャラマンは新技術の開発に加わり、企業が製品設計を採用できるようにし、ポストシリコン検証方法論や電気およびプロトコルコンプライアンテストソリューションの開発での多く経験を持ち、USBやQiを含む複数の技術について詳しいです。